- タイトル
子どもに伝えられなかった後悔
- エピソード本文
白血病に罹患した時、4人の息子がいました。年齢は10歳、8歳、6歳、4歳でした。妻と話し合った結果、長男の中学受験対策に影響することを考慮し、「伝えない」と決めました。私の治療は手術や化学療法がなくインターフェロンという薬を自己注射するだけでしたので、見た目の変化はありませんでした。入院を2週間、自宅療養を1週間し、職場に戻ったため隠すことは簡単でした。しかし、私の内面は大きく変わっていたことに気づいていませんでした。死を見つめることにより家族、特に息子たちへの想いが変わりました。そして、それまで仕事一辺倒だった私は家族との触れ合いを大切にしたいと考え、退院後から息子たちにハグを求めるようになりました。父親がハグし出した心境を知らないため、息子たちは怖くて逃げ回りました。こんなことを繰り返しているうちに、息子たちは僕と一緒にいることを避けるようになりました。妻がサポートしてくれましたが、一番かわいい盛りの息子たちと触れ合う機会が減ってしまいました。
10年ほど経った頃、参加した学会で「子どもへの伝え方」に関するシンポジウムがありました。その時、子どもたちに伝えなかったという自分が選んだ方法が間違っていたことに気づき、会場内で講師に相談して、息子たちに伝えることを決断しました。そこから数年かけて息子たちに伝え、徐々に関係を修復しました。現在も治療しながら元気に生活ししあわせに過ごしていますが、ただ一点、取り戻すことが出来ない10年間には悔いが残ります。
子どもの年齢に合わせた伝え方を考慮する必要がありますが、家族の中では隠し事はできるだけなくし、必ず伝えたほうがいいと思います。同じような悔いを残して欲しくないから。
*AYA世代のがんとくらしサポートより転載*
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