エピソード

2024.10.24
タイトル

会えなくなるの?

エピソード本文

私が脳腫瘍で入院した時、息子は7歳、娘は3歳でした。

「大きくなると脳幹の圧迫をきたし生命に関わるので今のうちに摘出したほうがよい」との主治医の説明を受け入院が決まってからは、自分の治療よりも子どもの生活をどうするかが緊急課題でした。夫は仕事で日中不在なため、同じ県内に住む祖父母にも頼み、急遽探した保育園の入園準備として通園袋作りから持ち物の名前付け、毎日の食事や保育園の送り迎えなど、文字通り一族総出でした。

しかし手術を前にした頃、病院から電話した際に夫が、自分では娘を十分に世話できないかもしれないと漏らしたのです。

その時は、なぜ急にそんなことを言い出したのか腑に落ちないまま、明るく装いその場をしのぎました。

3時間52分の開頭腫瘍摘出手術を無事終え、退院。

ある時私と子どもの3人でいる時、娘がよく泣いたという話になりました。

2人に聞いたところによると、私が居ないとぐずる娘に、夫が「そんなに泣くと二度と母さんに会えなくなる」とたしなめたそうです。そう言われて娘はさらに大泣きしてしまいましたが、兄から「そんなことないよ」と慰められて泣きやんだとのこと。しかし今度は息子自身が「会えなくなるの?」と不安になってしまったそうです。

翌朝来てくれた祖母にそう尋ねると「大丈夫」と言われ、息子はほっとしましたが、今度は憤慨した祖父母から、「小さい子に向かってなんてことを言うの」と夫が責められるような状況に至ったようです。

退院してこのような形で家族それぞれが抱いていた気持ちを知ることとなり、子どもたちが大人たちをよく観ていることに驚いたと同時に、不安を与えないように“言わない”ことで余計に不安にさせた部分もあるかもしれないと思いました。

以来子どもには、私の感じたまま、考えたままを直に伝えるように心がけています。中でも会えなくなるようなことがあってもずっと側にいるよという想いだけは伝えたく思っています。

*AYA世代のがんとくらしサポート(https://plaza.umin.ac.jp/~aya-support/experience/95/)より転載*

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