- タイトル
夫と「子どものいない人生」を生きる
- エピソード本文
罹患してから今日までの9年で一番苦しんだのは「子どものいない人生」を生きるつらさに折り合いをつけることでした。
10代から婦人科の疾患を抱えていましたが、子どもは大好きで、夫との間に子どもを授かることを夢みてつらい治療に耐えていました。その治療の先、初めての妊娠が絨毛がんに。治療は妊孕性を残そうと尽力していただきましたが、長年の治療の果てのがん罹患、産婦人科で治療を受け続ける日々に心も体も耐えられなくなり、もう一度妊娠に挑戦する自信や力を失ってしまいました。
時期を同じくして「若くしてがんになっても親になることを諦めない」という支援や報道が増えてきて、妊娠に向かえない自分は母性を欠いているのではないかと周囲の期待に応えられない自分を責めるようになりました。
赤ちゃんの泣き声を聞くと流産手術の日を思い出し、出産予定日だった季節になると「がんにならずに産んであげられていたら●歳か…」とかなしみが滲み、幸せそうな親子連れをみると夫の幸せな未来を奪ってしまった気がして人が集まる場所にも行けなくなり…。夫は「わたしが生きてくれていたらそれでいい」と傍に居てくれましたが、自分が親になれないことは自分の責任だからと諦めがついても、夫まで子どものいない人生に巻き込むことは申し訳なく、いっそう自分を責めました。
それでも、諦めずに傍に居てその時々のつらい気持ちを聴き続けてくれた夫や、流産経験者や子どものいない人生を歩む人、家族や支援者の立場で心を寄せてくれる人と出会い語りあうなかで、少しずつ「このわたし」を認められるようになり、「子どもに注ぐはずだった愛情や時間は、その分夫に注ごう」という気持ちになり、夫との一日一日を大切に少しずつ前を向けるようになりました。
このつらさは一生ついてくるものとは思いますが、その時々の想いを抱え込まずに打ち明けあって、思いやりに変えながら共に生きてゆけたらと思います。
*AYA世代のがんと暮らしサポート(https://plaza.umin.ac.jp/~aya-support/experience/46/)より転載*
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